Webデザイナー 竹田こんにちは!
ナマステデザインラボの竹田です!
チラシのラフが上がってきたとき、Instagramのフィードを見返したとき、「なんだか、おしゃれじゃないな」と感じて作り直したことはないでしょうか。ヨガ・ピラティス教室の先生は、レッスンの空気感やご自身の世界観を大切にされている方がほとんどです。だからこそ、自分の教室から出ていくものが野暮ったく見えるのは耐えられない。この感覚はとても自然なものです。
ただ、ここに落とし穴があります。おしゃれに寄せていくほど、体験レッスンの申し込みが減っていくことがあるのです。「デザインにお金をかけたのに反応がなかった」という相談の多くは、デザインが下手だったのではなく、目的とデザインの方向がずれていた、というだけの話だったりします。
そのずれの正体は、「アート」と「デザイン」を混ぜてしまっていること。この記事では、その違いをヨガ・ピラティス教室の現場で起こる場面に置き換えながら、「いいデザイン」の判断基準と、今日から確認できるチェック方法を整理します。
「おしゃれにしたい」と「伝わる」がぶつかる瞬間
まず、簡単なクイズから始めます。下の2枚を見比べてみてください。
初心者向けのリラックスヨガ、体験レッスンの案内チラシです。載っている文章はまったく同じもの。日時も、場所も、料金も、先生のプロフィールも変わりません。違うのは見せ方だけです。
A案


B案


A案は、黒に近い深い緑の背景に細い文字。メインの写真は、ひとりで大きく反るポーズです。静かで上品な、作品のような仕上がりになっています。B案は白を基調にした明るい紙面で、メインの写真は複数の生徒さんが並んで座っているレッスン風景。文字は濃い色で置かれ、「初回体験レッスン」と料金がいちばん大きく目に入ります。
さて、先生ご自身が「かっこいい」と感じたのはどちらでしょうか。おそらくA案ではないでしょうか。制作の現場でも、A案のほうが「おしゃれ」と言われることは多いです。
それでも、選ぶべきはB案のほう
このチラシの目的は「かっこいいと思われること」ではありません。運動から遠ざかっていた人に、初めての一歩を踏み出してもらうことです。
A案を、ヨガ未経験の40代の方が駅前で受け取ったと想像してみてください。濃い背景に細い文字。上級者向けのスタジオか、ダンスのイベントか、何かのアパレルの広告か——リラックスできる場所だとは、たぶん伝わりません。読もうとしても文字が細くて目が滑る。日時と料金を探すのに時間がかかる。そこで手が止まります。
B案を選ぶ理由は「かわいいから」ではなく、目的に合っているからです。ここが「いいデザイン」を判断するときの出発点になります。好き嫌いで決めない。目的に合っているかで決める。これだけで、社内やデザイナーとのやりとりも一気にラクになります。
アートは「自分のため」、デザインは「誰かのため」
なぜ、こういうずれが起きるのか。根っこにあるのが、アートとデザインの性質の違いです。
アートは、伝わらなくても成立する
アートは自己表現です。好きな色を使い、思うままに形にする。見た人が「意味がわからない」と言っても、作品としては成立します。むしろ、受け取り方が人それぞれであること自体が価値になったりもします。評価の基準が、つくった人の内側にあるのがアートです。
デザインは、伝わらなければ失敗
一方でデザインは、目的を達成するための道具です。誰に届けたいのか、届いた人にどう感じてほしいのか、そのあと何をしてほしいのか。この3つが決まっていて初めて成立します。評価の基準が、受け取る人の側にあるのがデザインです。
だからデザインには、はっきりと「うまくいった/いかなかった」があります。どれだけ美しくても、初心者向けクラスの案内が初心者に届かなければ、その仕事は目的を果たしていません。
教室運営の場面でいうと、こんな形で表れます。
- Instagramのフィードを世界観で統一したくて、写真だけを整然と並べた。きれいなのに、レッスンの曜日も場所も料金もどこにも書いていない
- ホームページのトップに、ふわっとした抽象的なキャッチコピーを置いた。読んだ人が「何の教室なのか」を判断できない
- ロゴを気に入りすぎて大きく置いた結果、「体験レッスン受付中」より目立ってしまった
どれも、アートの評価軸で作ったものを、デザインの場所に置いてしまった状態です。ちなみにこれは、先生のセンスの問題ではありません。目的を先に言葉にしないまま作り始めると、誰でもこうなります。
「いいデザイン」は、伝えたい人にちゃんと届く
では「伝わる」とは、具体的にどういう状態でしょうか。
ヨガ・ピラティス教室の場合、チラシやホームページを見る人は、たいてい何かに困っています。産後で体がしんどいけれど子連れで行ける場所がない。更年期の不調をなんとかしたいけれど、若い人ばかりの教室は気が引ける。仕事帰りに通いたいけれど、大人数のクラスでひとりだけ動きが違ったら恥ずかしい。
この人たちが探しているのは、世界観ではありません。「自分が行っても大丈夫か」という答えです。伝わるデザインとは、その答えが最短で見つかるデザインのことです。
今日からできる一手|10秒テスト
判断に迷ったときのために、その場でできる方法をひとつ。
チラシでもホームページのトップでも構いません。教室のことをまったく知らない人(ご家族でも、生徒さんでも大丈夫です)に10秒だけ見てもらい、そのあと画面や紙を隠して、次の3つを聞いてください。
- これは、誰向けのものだと思った?
- いつ・どこでやるものだと思った?
- 気になったら、次に何をすればいいと思った?
3つとも答えられたら、そのデザインは仕事をしています。ひとつでも「わからなかった」が出たら、足りないのはおしゃれさではなく情報の置き場所です。この3つは、そのままホームページに必要な情報の考え方にもつながります。
そして意外と多いのが、3つめの「次に何をすればいい?」で詰まるケースです。予約ボタンが下のほうに1つだけ、しかも背景になじむ色で置かれている。これは「おしゃれ」を優先した結果、行動する場所が消えてしまった状態です。
ヨガ・ピラティスは「文字を読ませてなんぼ」のサービス業
もうひとつ、押さえておきたい前提があります。ヨガ・ピラティスは物販ではなくサービスだということです。
服や雑貨なら、写真を見ればおおよその中身がわかります。でもレッスンは、写真を見ても中身がわかりません。少人数なのか、初心者にどこまで声をかけてもらえるのか、レッスン後にどう感じるのか。これは全部、文字で伝えるしかない領域です。
つまり、教室のチラシやホームページは「文字を読んでもらう」ことが仕事の中心にあります。読みにくくした時点で、伝える手段そのものを失っているわけです。
コントラストには、目安になる数字があります
「読みやすさ」は感覚の話に見えますが、実は世界的なガイドラインに数値の目安があります。Webアクセシビリティの国際的な基準であるWCAG 2.1では、通常サイズの文字は背景とのコントラスト比4.5:1以上、大きめの文字(およそ18ポイント以上、または14ポイントの太字以上)は3:1以上が最低ラインとされています。
数字そのものを覚える必要はありません。ここから読み取れる実務的なポイントは、次の2つです。
- 薄い色の文字は、大きくしても限界がある。ベージュ背景に淡いグレーの文字、白背景に薄いピンクの文字などは、おしゃれに見えても読める人が限られます
- 暗い背景に細い白文字は、相性が良くない。白抜き文字を使うなら、書体を太めにするか、文字サイズを上げる前提で考えます
さらに、シニア層に向けた案内では別の配慮が必要になります。東京都が2025年3月に公開した「TOKYOユニバーサルデザインガイドライン(視覚情報版)」でも、色の選び方に加えて文字やレイアウトへの配慮がまとめられています。60代以上の生徒さんが多い教室、シニアクラスの案内チラシを作るときは、文字を大きくし、白地に黄色のような見分けにくい組み合わせを避ける。それだけで届き方が変わります。
読ませる文章そのものの整え方については、伝わりやすい「読ませる」書き方もあわせて確認してみてください。
写真は「文字の代わり」ではなく「文字を読ませるための入口」
スマホでチラシやページを見るとき、多くの人は写真を先に見ます。写真で「なんか良さそう」と感じてもらえて、はじめて文字を読み始めてもらえる。つまり写真は文字の代わりではなく、文字までたどり着いてもらうための入口です。
だから写真は、雰囲気だけの素材写真より、実際のスタジオと先生が写っているもののほうが強く働きます。海外モデルの完璧なポーズ写真より、少人数のクラスで先生が横についている写真のほうが、「ここなら大丈夫そう」と思ってもらえるからです。
撮影の予算が今すぐ取れない場合でも、手持ちの写真を整えるだけで印象は変わります。明るさと色味をそろえるだけでも別物になるので、写真のレタッチについての記事を参考にしてみてください。
自分の世界観 × 誰かのための工夫
ここまで読んで、「じゃあ自分の世界観は捨てないといけないのか」と思われたかもしれません。まったく逆です。
先生の世界観は、教室の一番の資産です。デザインでやるべきなのは、それを薄めることではなく、受け取る人にわかる形へ翻訳すること。翻訳のポイントは、色・書体・写真の3つに集約されます。
色
色は、言葉より先に空気感を伝えます。
- ゆったりリラックスさせたいクラス:グリーン系、生成り、くすみのあるアースカラー
- 呼吸を整える朝のクラス:明るいブルー系、白の余白多め
- 元気に体を動かすピラティス:オレンジ・イエロー系のアクセント
- 夜ヨガ・キャンドルヨガ:濃いネイビーにゴールドやウォームグレーを合わせる
ただし、濃い背景を使うときほど文字の扱いに注意が必要なのは、先ほどのとおりです。「夜ヨガだから黒背景」は方向としては自然ですが、日時と料金の部分だけは明るいエリアに逃がす、といった工夫を合わせて考えます。
書体と余白
明朝体は、線に強弱があるぶん、落ち着きや所作の丁寧さが伝わりやすい書体です。行間と文字間をたっぷり取ると、より穏やかな印象になります。反対にゴシック体は視認性が高く、アクティブな印象や、遠くから読ませたい情報に向きます。
実務的には、混ぜて使い分けるのが現実的です。世界観を伝えるキャッチコピーは明朝体、日時・料金・予約方法などの読ませたい情報はゴシック体、というように役割で分ける。ここを統一しようとして全部を細い明朝体にすると、肝心の情報が読まれなくなります。
料金の見せ方は特に迷いやすい部分なので、料金表の見せ方ガイドも参考になります。
写真
写真は「誰が通っているか」を語ります。若い方だけが写っていれば若い人向けに見え、年齢層に幅があればその幅が伝わります。産後クラスを増やしたいのに掲載写真がすべて20代のポーズ写真、という状態は、意図しないメッセージを出してしまっている典型です。
Instagramのフィード全体でも同じことが起きます。世界観を統一しつつ、どんな人が通っているかが伝わる配分にできているか。Instagramのフィード投稿の作り方とあわせて、いま並んでいる9枚を見直してみてください。
まとめ
アートは自分のため、デザインは誰かのため。この一線を引けるようになると、デザインの判断は驚くほど迷わなくなります。
- 「おしゃれかどうか」ではなく、目的に合っているかどうかで選ぶ
- ヨガ・ピラティスはサービス業。文字を読ませることが仕事の中心にある
- 読みやすさには目安の数字がある。薄い文字・細い白抜き文字は反応を落とす
- 世界観は捨てない。色・書体・写真の3つで「伝わる形」に翻訳する
- 迷ったら10秒テスト。誰向け・いつどこで・次に何をすればいいか、が伝わっているか
まずは、いま手元にあるチラシかホームページのトップページで10秒テストをやってみてください。答えが返ってこなかった項目が、次に直す場所です。
「世界観は大事にしたい、でも体験予約にもつなげたい」——その両立でつまずくのは、先生に限った話ではありません。ナマステデザインラボは、ヨガ・ピラティススタジオ専門で、教室の世界観を保ったままホームページ・Instagram・体験予約までの導線を一緒に整えています。先生がレッスンに集中できるように、Webのことは気軽にご相談ください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次のブログでまたお会いしましょう!またね〜!
参考・参照URL
- Understanding SC 1.4.3: Contrast (Minimum) | W3C WAI(WCAG 2.1)
- 達成基準 1.4.3: コントラスト (最低限) を理解する | WAIC(日本語訳)
- TOKYOユニバーサルデザインガイドライン(視覚情報版)| 東京都福祉局
※ コントラスト比の数値はWebアクセシビリティの基準であり、印刷物にそのまま適用されるものではありません。紙媒体では用紙や印刷方式によって見え方が変わるため、目安として扱ってください。








